『ブラインド・マッサージ』

マッサージ店を舞台にした映画『ブラインド・マッサージ』は、光のない世界で生きる彼らのプライドや恋や欲望を生生しく描いた盲人たちの群像劇だ。『天安門、恋人たち』『スプリング・フィーバー』などで知られるロウ・イエ監督が、中国でベストセラーになった小説『推拿』を映画化。視覚障害者の生活を健常者が想像するのは難しいが、メンツや尊厳を何よりに大切にする彼らの姿に、はっと気づかされる場面がいくつもある作品だ。


映画の舞台は中国・南京。盲人マッサージ店を経営する沙復明(シャー・フーミン)を頼って、マッサージ学校の同級生・王(ワン)が恋人・孔(コン)と一緒に転がり込んでくるところから物語が動き始める。孔の香りに幼い頃に亡くした母の面影を重ねながらも、初めての欲望を募らせていく若い小馬(シャオマー)や、「美しすぎる」と評判の新人マッサージ師・都紅(ドゥー・ホン)、都紅に強い関心を示し、“美とは何か”と見たことのない概念について思いをめぐらせる復明ーーマッサージ店の人間模様は、静かに、でも大きく波打ち、盲人たちの苦しみや欲望をあぶり出しく。

 

原作小説は、マッサージ店で働く登場人物をひとりひとり章立てで紹介する形式だが、この映画は“爆発寸前”の欲望を抱えた小馬を軸に進む。原作にあるさまざまなエピソードから、盲人たちの性に重きを置いて物語を再構築するチョイスと、南京らしい湿度の高さを感じさせる映像センスに、艶っぽい作品の多いロイ・イエらしさを感じる。

 

小馬を演じるのは、中国でいま大人気の若手俳優・黄軒(ホアン・シュエン)。染谷将太とともに主演を務めるチェン・カイコー監督の日中合作映画『空海-KU-KAI-』も控える実力派だ。端正なルックスと抜群の演技力を併せ持つ彼は「きっとこれからくる」ので、ぜひ名前を覚えておいてください!


この黄軒を含め、マッサージ師役でプロの俳優が4人出演しているが、その他はすべて実際の視覚障害者を起用している。中でも注目は、孔を演じた張磊(チャン・レイ)さん。イケメン俳優相手にがっつりラブシーンを演じているのだが、演技は素人であるがゆえに妙にリアルでとてもエロい。数々の濡れ場を撮ってきたロウ・イエ監督、さすが変態だな!と思いました(褒め言葉)。

 

 

『ブラインド・マッサージ』
原題:推拿 監督:ロウ・イエ
出演:ホアン・シュエン、チン・ハオ、グォ・シャオドン、メイ・ティン
配給・宣伝:アップリンク
2017年1月14日(土)より、
アップリンク渋谷 、新宿K's cinemaほか全国順次公開

 

執筆者=新田理恵(フリーライター&エディター)


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