『小さな園の大きな奇跡』

アクションや警察モノというイメージが強い香港映画だが、2015年の香港の映画興行収入ランキングで香港映画のトップに輝いた作品は、意外にも幼稚園を舞台にしたヒューマンドラマ。この話題作『小さな園の大きな奇跡』が今月5日から日本公開されている。


本作は実話をベースに、閉園寸前の幼稚園を救おうと奔走する女性の奮闘を描く。
有名幼稚園の園長を務めてたルイ・ウェホンは、エリート教育に疲れて退職を決意。ストレスから解放されたはずなのに、ルイは心にぽっかり穴が開いたような気持ちに・・・。そんなとき、閉園の危機に瀕した幼稚園に、経済的に貧しい園児5人が取り残されているというニュースを目にする。閉園を免れる条件は、新園長が就任すること。しかし、園が払えるその月給は、たった4,500香港ドル(約6万円)。ルイは居ても立ってもいられなくなり、園長に応募するがーー。

 

この映画を観るとまず、香港の人は家庭の経済状況によって、こんな小さなころから苛烈な格差社会に直面していくのかと驚く。超学歴主義の香港では、就学前教育が当たり前。幼稚園はすべて私立で、経済的に余裕のある親たちは、我が子のために、少しでも条件が良く、英才教育を施してくれる幼稚園を選び、幼稚園が終われば習い事に通わせ、なんとしても一流の学校に入れようと必死だ。つまり、ルイが救おうとしているような貧しい幼稚園には目もくれない。子どもたちにとってこの状況はもちろん大きなプレッシャーで、ストレスが原因とみられる学生の自殺のニュースは後を絶たない。この映画がヒットしたということは、香港の人々もそんな状況に疲弊していたからに他ならず、本作は「子どもにとって、本当に大切なものは何か?」を改めて問うことになった。

 

ルイを演じるのは、香港きっての人気歌手・女優のミリアム・ヨン。ルイの夫には、出演作が引きも切らない"香港で最も稼ぐ俳優"のルイス・クー。『新少林寺/SHAOLIN』などのヒットメーカー、ベニー・チャンが、新鋭監督の熱意を買ってプロデューサーを務めた。

 

決して派手ではないが本作のような小粒の良作に重量級のスターや監督が手を貸すところに、香港映画界の良心を感じる。

 

『小さな園の大きな奇跡』
原題:五個小孩的校長
監督:エイドリアン・クワン 
製作:ベニー・チャン
出演:ミリアム・ヨン、ルイス・クー
配給:武蔵野エンタテインメント
公式サイト little-big-movie.com
新宿武蔵野館ほかで公開中

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執筆者=新田理恵(フリーライター&エディター)




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