『見えない目撃者』

近年の中国映画界では、韓国の監督が中国人キャストを使って中国映画を撮るケースが増えている。『八月のクリスマス』のホ・ジノ監督がフランスの同名文芸小説を上海を舞台に映画化した『危険な関係』(12)、『ラスト・プレゼント』のオ・ギファン監督が同作を中国向けに再構築した『最後の晩餐』(13)、今月8日公開の『更年奇的な彼女』もまた、『猟奇的な彼女』で知られるクァク・ジェヨン監督が中国を舞台に撮り上げた、監督お得意のちょっとエキセントリックなヒロインが登場するラブストーリーだ。


今月紹介するサスペンス『見えない目撃者』(公開中)もこの流れに属する1本。2011年の韓国映画『ブラインド』を、ストーリーはそのままに、アン・サンフン監督自らが中国に舞台を移してリメイクした。

自動車事故で弟と視力を失った主人公のシャオシンは、雨の日の夜、偶然乗ったタクシーが誰かをはねた衝撃を感じて運転手を問い詰める。しかし運転手は「犬だ」と言い張り、はねた女性を誘拐して走り去ってしまう。それを敏感に感じ取ったシャオシン。さらに、懸賞金目的のもう一人の目撃者リン・チョンが現れ、2人はともに警察に協力するが、やがて何者かに狙われるように・・・・・・。シャオシンを演じるのは、中国の人気女優ヤン・ミー。リン・チョンには人気男性音楽グループEXOの元メンバーであるルハンが扮し、日本でも若いファンの注目を集めている。

ストーリー展開や細かなエピソードの数々は基本的に韓国版を踏襲しているが、大きな違いは、ルハンのミュージックビデオ的なシーンがふんだんに盛り込まれているところか。ローラースケートの腕前を華麗に披露してみたり、ギターを抱えて生歌を響かせてみたり。というのも、若いアイドル俳優を目当てに劇場に足を運ぶ女性が多いのは日本だけではなく、最近の中国でも同様の現象が目立っている。「小鮮肉(シャオシェンロウ)」と呼ばれる若くて爽やかなイケメンたちが映画やドラマで引く手あまたなのだ。そんな状況が、中国映画の観客の若年化の一因にもなっている。

若いイケメンなんかに興味ないわよ!という方にはひっかかる演出かもしれないが、安心してください。最後まで息もつかせぬ展開で、なかなか見応えのあるサスペンス映画に仕上がっている。

もう1つ付け加えると、中国在住歴のある筆者は、赤信号でも右折OK、歩行者がいても速度を落とさず自動車が突っこんでくるという、視力があってもかなりアブナイ中国の道路横断事情を体験しているので、盲導犬だけを頼りに歩くシャオシンが心配で心配で……という、別のハラハラドキドキもありました。

『見えない目撃者』
原題:我是証人
監督:アン・サンフン
出演:ヤン・ミー、ルハン、ワン・ジンチュン、チュー・ヤーウェン
配給:ギャガ・プラス 中国・韓国合作
公式サイト http://gaga.ne.jp/mokugekisha/
TOHOシネマズ新宿ほか全国順次公開中

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執筆者=新田理恵(フリーライター&エディター)


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