『オデッセイ』

1月に発表された2016年ゴールデングローブ賞で作品賞を受賞した『オデッセイ』。現在、TVで流れているCMなどを見る限り、『インターステラー』や『アポロ13』を彷彿とさせるシリアスなSF大作にしか思えないが、意外にもコメディ/ミュージカル部門での受賞だった。

映画の内容を簡単に説明すると、絶対絶命の状況からの生還を目指す1人の宇宙飛行士の物語だ。有人火星探査計画のミッションにあたっていた6人の宇宙飛行士は、作業中に砂嵐に襲われる。火星からの撤収を余儀なくされるが、マット・デイモン演じる主人公のマークは、その離陸作業中に爆風に飛ばされてしまう。仲間たちはマークは死亡したと判断して離陸するが、彼は生きていた。残された食料は30日分。通信手段は断たれ、次の探索チームが来るのは4年後。この絶望的な状況の中で、マークが取った行動は…?

ゴールデングローブのスピーチに登壇したリドリー・スコット監督もチラリと疑問を口にしていたが、なぜこれがコメディ/ミュージカル部門なのか?

実は題材からは見当もつかないほど、気分がアガる超ポジティブな映画なのだ。仲間のクルーが残していった70年代ディズコミュージックのCDをお供に、植物学者であるマークは持てる知識を総動員して火星で生き残りを図る。シーンに合わせた曲のセレクトが絶妙。グロリア・ゲイナーの『I Will Survive』や、ドナ・サマーの『Hot Stuff』、今聴くとぐっとくるデヴィッド・ボウイの『Starman』など、歌詞をそのシチュエーションに重ね合わせると、思わず笑ってしまう。

マークにも地球に彼の帰りを待つ家族がいることは示されはするが、よくありがちな「愛する家族のために」という思いを生きる動機として強調すぎないところが良い。置き去りにされたと気づいた瞬間から、「生還を考えるのは当然」とでも言うようにトライを繰り返すマークのメンタルの強さが尋常ではなく、「頼りになるわー」と感心しきりで観る側もエネルギーを消耗しない。そういえば、本作と一緒に今年のアカデミー賞にノミネートされているライバル『レヴェナント 蘇えりし者』の主人公も荒野で壮絶な体験をしながら生き残るサバイバル男子だ。世知辛い世の中だが、生命力の強い男たちのドラマは観ているだけで元気がもらえる。

『オデッセイ』
監督・製作=リドリー・スコット
原題:The Martian
出演:マット・デイモン、ジェシカ・チャステイン、クリステン・ウィグ
配給:20世紀フォックス映画
2月5日(金)よりスカラ座ほか全国にて公開

(C)2015 Twentieth Century Fox Film

 

執筆者=新田理恵(フリーライター&エディター)


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