『ザ・ウォーク』

1974年、フランス人の大道芸人フィリップ・プティが、当時世界一の高さを誇ったニューヨークのワールドトレードセンターのツインタワーを命綱なしで渡るという驚きのパフォーマンスに挑戦した。タワーは地上110階、高さ411メートル…。この嘘のようなホントの話を、『フォレスト・ガンプ/一期一会』などで知られる名匠ロン・ハワードが映画化したのが『ザ・ウォーク』だ。

このチャレンジについては、アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞を受賞した『マン・オン・ワイヤー』という映画にもなっているので、本人がご存命で、試みが成功するのは最初から分かっている。しかし、ついに綱渡りに挑む後半部分は「いやいや、もう、分かった、分かったからやめて~!!!」と手に汗握りっぱなし。2016年の"ドキドキ始め"にお薦めしたい1本だ。(高所恐怖症の方は注意が必要!)

本作の内容を平たく言えば、ただ綱渡りに挑戦するだけのお話。だが、入念にプランを練り、建設中のタワーに潜り込んでその構造を詳しく調査し、もう一方のビルの屋上にロープを渡すまでのプロセスも非常にスリリングで(違法だし)、アーティストとしてのプライドを持って命がけの挑戦をするプティの執念に、観ている側もいつしか"共犯"気分になってしまう。

そして、プティと並ぶもう1つの主役がツインタワーだ。2001年9月11日のアメリカ同時多発テロで崩壊した映像を今でも生々しく思い出すが、綱渡りのシーンでは、プティと共鳴するビルがまるで生命を宿しているかのようにさえ見える。失われたものに対する作り手のリスペクトがそこにはある。

プティを演じるジョセフ・ゴードン=レヴィットが実に芸達者。大道芸人らしい身のこなしをはじめ、フランス語なまりの独特の話し方など、プティ本人を外見からスピリットまでまるっと自分のものにしている。筆者はフランス語は分からないが、本作の試写を観た直後に『マン・オン・ワイヤー』をDVDで見直したら、本人とそっくりに聞こえた。フランス語学習者の方に、ぜひ感想を聞かせていただきたいところだ。

『ザ・ウォーク』
監督・脚本・製作:ロバート・ゼメキス
原題:The Walk
出演:ジョセフ・ゴードン=レヴィット、ベン・キングズレ—
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
1月23日(土)より全国にて公開
公式サイト http://www.thewalk-movie.jp/

 

執筆者=新田理恵(フリーライター&エディター)


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