『リザとキツネと恋する死者たち』

前回に続き、今月もハンガリー映画をご紹介。『リザとキツネと恋する死者たち』(12月19日公開)という作品なのだが、この映画の面白さを一言で表すと「違和感だらけ」ということかもしれない。

一見、ビジュアルはレトロでキュート。なのに、始まってみると、おかしな日本語をのせた昭和歌謡風の音楽ががんがんぶっ込まれてくるのだ。物語設定も変わっている。主人公は30歳独身の孤独な女性リザ。彼女が唯一心許せるのは、同居している(というか取り憑かれている)日本人歌手「トミー谷」のユーレイなのだ。ちなみに、「トミー谷」は誤字ではない。見た目は優男風なのに、腹の中は真っ黒なトミー谷。恋をしたいと奮起するリザに近づく男たちを、嫉妬に狂ってバッタバッタとあの世送りにしてしまう。文字で説明するよりも、公式HPのリンクからムービークリップを開いていただくと、嫌でも耳に残るヘンテコな歌が聞こえてくるので、「え、何これ…」と興味をもっていただけるかと思う。

物語は、脚本も務めたウッイ・メーサ—ロシュ・カーロイ監督が日本の那須を訪れた際、美女に化けた女狐が帝を誘惑して日本を乗っ取ろうとする伝説「九尾の狐伝説」の話を聞き、インスピレーションを得て書き上げたものだという。ハンガリーでは売れっ子CMディレクターというだけあって、インパクトのある絵作りが上手い。

そして、薄々察してらっしゃるかもしれないが、この監督、ごりごりのJ-POPオタクである。来日した際にはHMVで5時間もJ-POPを聞きまくり、オールディーズから日本人でもよく知らないマイナーなミュージシャンの楽曲までたっぷりスマホに入れて常に携行している。 かといって、"日本への愛が溢れちゃいました!"という暑苦しい仕上がりになっていないところがこの映画のミソ。随所に共産主義時代への皮肉を込めてみせるなど、意外とドライで計算高くふざけているところが、さらに絶妙の笑いを生んでいる。

最後に、観れば絶対ネット検索したくなるトミー谷役のデヴィッド・サクライさんについて触れておくと、日本人の父とデンマーク人の母を持ち、現在は米国を拠点に活躍中の俳優だ。本作では黒縁メガネのインテリ風にキメているが、アクションスターを目指しているらしく、実はかなりマッチョというギャップも面白い。彼の今後の活躍にも期待。

『リザとキツネと恋する死者たち』
監督:ウッイ・メーサーロシュ・カーロイ
英題: Liza, The Fox-Fairy
出演:モーニカ・ヴァルシャイ、デヴィッド・サクライ
配給:33 BLOCKS(サンサンブロックス)
12月19日(土)より新宿シネマカリテほか全国順次公開
公式サイト http://www.liza-koi.com/

 

執筆者=新田理恵(フリーライター&エディター)


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