『ラブストーリーズ コナーの涙|エリナーの愛情』

いつも一緒にいるのに、何を考えているのか分からない。そんなことは日常茶飯事。それが男と女ならば尚更だ。この永遠に解決できない男女のすれ違いを面白い試みで映し出した映画が『ラブストーリーズ コナーの涙|エリナーの愛情』。一組のカップルの別れから再生を、男と女、別の視点から2本の映画でつづっていく。


舞台はニューヨーク。コーナー・ラドローとエリナー・リグビーは子供を失うという不幸に見舞われる。互いに愛しているのにすれ違ってしまう2人は、結婚生活を解消し、別々の道を歩もうとするが…。


コナーの視点から描いた『~コナーの涙』と、エリナーの視点から描いた『~エリナーの愛情』。2本は、同じ出来事でもそれぞれのフィルターを通した記憶がもとになっているため、微妙にセリフやシュチュエーションが異なる。原題は"The Disappearance of Eleanor Rigby: Him&Her"。「エリナー・リグビーの消失」。つまり、コナーは自分のもとを去ったエリナーを、エリナーは見失った自分自身をそれぞれ取り戻そうとする物語でもあり、男女の過去への向き合い方の差が巧みに表現されていて思わずうなる。


まず物語の出発点から違う。コナー版は、2人が出会って間もない頃の幸せな場面からほぼ時系列にそって進むのに対し、エリナー版は、失意の彼女がマンハッタン橋から身を投げ、骨折して実家に戻るところから始まる。コナーとの生活は回想で差し挟まれる程度。女性は終わった恋愛はサクッと切り捨てて前に進むのに、男性は引きずりがちだとよく言う。2本の構成の違いからも、願わくは元の幸せを取り戻したいと考えているコナーと、ゼロからやり直したいと願うエリナーの違いが見て取れる。


ほかにも、随所に小さな仕掛けがいっぱい。それらを積み上げてキャラクターの気持ちに思いを馳せるという、豊かな映画体験が楽しめる。できれば記憶の鮮明なうちに、2本続けて鑑賞することをおススメ。さらに、どちらを先に観るかによっても、随分印象が違うはずだ。

コナーを演じるのはジェームズ・マカヴォイ。最近は『X-MEN』シリーズなど、アクション映画やサスペンスなどでハードな役柄が続いていたが、久しぶりに彼のスウィートな一面が堪能できる。エリナー役にはジェシカ・チャステイン。『ツリー・オブ・ライフ』の非現実的なまでにナチュラルなブラッド・ピットの妻や、『ゼロ・ダーク・サーティ』のCIA分析官など特殊なキャラクターで強い印象を残してきた彼女が、等身大の魅力を発揮している。

公開初日はバレンタインデー。カップルで観ると、その後の会話が盛り上がりそう。ただし、ケンカになったらごめんなさい。



『ラブストーリーズ コナーの涙|エリナーの愛情』
原題: The Disappearance of Eleanor Rigby: Him&Her
監督・脚本:ネッド・ベンソン
出演:ジェームズ・マカヴォイ、ジェシカ・チャステイン、
   ヴィオラ・デイヴィス、キーラン・ハインズ、
   イザベル・ユペール、ウィリアム・ハート
配給:ビターズ・エンド、パルコ 2013年/アメリカ/
   『~コナーの涙』95分、『~エリナーの愛情』105分
2月14日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、
新宿シネマカリテほか全国順次公開
公式HP http://bitters.co.jp/lovestories/

(C)2013 Disappearance of Eleanor Rigby, LLC. All Rights Reserved  

 

執筆者:新田 理恵(フリーライター&エディター)


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