『ホワイト・バレット』

香港ノワールの巨匠と言われるジョニー・トー監督の新作『ホワイト・バレット』が2017年1月7日から公開される。
痺れる漢(おとこ)映画の演出に定評があるトー監督だが、一方でラブ・ストーリーもコンスタントに撮り続ける幅の広い"職人"。本作は、そんなトー監督の職人芸が炸裂したサスペンスだ。また、毎度"ザ・男祭り"なトー監督のノワール映画では珍しく、主要キャストとして中国の人気女優ヴィッキー・チャオが参加している。


物語は香港の巨大病院で展開する。というか、その病院しか登場しない。もっと言うと、ワンフロアしか出てこない。
主な登場人物は、17歳で中国から香港に渡り、脳外科医として成功するも、このところ手術の執刀ミスが続き、そのストレスに苦しんでいる女性医師トン(ヴィッキー)。そこに頭に銃弾を受けて搬送されてきた強盗事件の容疑者シュン。そしてシュンを監視する警察のチャン。実は、チャンはシュンを尋問する際、部下に銃で脅迫するよう命令。部下がシュンに発砲してしまい、その証拠を隠蔽しようと機会をうかがっているのだった…。

 

警官と強盗が登場するが、いわゆる「香港の警察モノ」とは違う。病院という閉鎖空間を舞台に、トン、シュン、チャンの三者三様の人間ドラマが進行する。彼らにはそれぞれに弱点があり、それぞれに葛藤を抱えている。そんな3人の思惑が、終盤「嘘ぉ〜」と思わず声が出る怒濤の展開の中で交錯する。

 

圧巻はクライマックスのおよそ10分間におよぶ銃撃戦。なにせ舞台は大病院。人が多い。トー監督は、その阿鼻叫喚の場面を長回しで画面に収めるという大変な荒技に挑戦している。しかも、スローモーションで見せるアクションシーンを、実際にスローモーションで演技させるという斬新な演出を取り入れたため、俳優陣はトレーニングに2ヵ月費やしたという。撮影の段階では、カメラの前の俳優はもちろん、バックで走りまわるスタッフも含めて約200人が一度に動くため、リハーサルに6日、撮影に丸1日かけたという大がかりなシーンだ。ぜひ2017年の映画初めにスクリーンで堪能してほしい。

 

『ホワイト・バレット』
原題:三人行
監督:ジョニー・トー
出演:ルイス・クー、ヴィッキー・チャオ、
ウォレス・チョン、ラム・シュー
配給:ハーク
2017年1月7日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開

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執筆者=新田理恵(フリーライター&エディター)




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