『君がくれたグッドライフ』

ある日突然、誰にも別れを告げることなく、逝くかもしれない。 自然災害やテロ、少子高齢化や希薄な人間関係が引き起こす孤独死など、ニュースを見れば不安要素が否応なしに目に入る現在、「どう終わりを迎えるか」は、年齢問わず、誰にとっても看過できないテーマだ。


愛する人、信頼できる友人たち、家族に囲まれて最期を迎えることができるというのは、とても幸福なことだという認識はおそらくほとんどの人が共有している。だけど、そのシンプルな願いすら、叶えることが容易ではない世の中になっているのではないだろうか。

 

ドイツ映画『君がくれたグッドライフ』は、尊厳死の是非という難しいテーマを孕みながらも、この「どう終わりを迎えるか」という課題を、「どう生きるか」という希望へと鮮やかに変換してみせる秀作だ。

 

主人公のハンネスは、30代半ばという若さで不治の難病を発症し、積極的安楽死を選択する。年に一度、妻キキを含む6人の仲間たちと自転車で旅をしていた彼は、今年の行き先を尊厳死が認められているベルギーに決定。仲間にはその「目的」を内緒にしたまま、人生最期の旅に出発する…。

 

「死」を扱っていながらも悲壮感は感じさせず、彼らが自転車で駆け抜けるドイツからベルギーに向かうのどかな風景とともに、生のきらめきを見せてくれる。

 

この映画を見終わってまず感じたのは、悲しみよりも、「こんな友人がいて羨ましい!」という羨望。仕事や日々の生活に精一杯で、生きていることを「楽しむ」時間が足りてないのではないか? 「忙しい」を口実にして、他愛ないバカ話をする幸せな時間をともに過ごせる人々を、みすみす手放しているのではないか? 自分にとっての"グッドライフ"とは何か。それを考えさせてくれる95分だ。

『君がくれたグッドライフ』
原題:Tour de Force
監督・脚色:クリスティアン・チューベルト
出演:フロリアン・ダーヴィト・フィッツ、ユリア・コーシッツ
配給:ショウゲート   2014年/ドイツ映画/95分
公式サイト http://goodlife-movie.com/
5/21(土)より、 ヒューマントラストシネマ有楽町、
YEBISU GARDEN CINEMAほかにて公開

(c)2014 Majestic Filmproduktion GmbH / ZDF

 

執筆者=新田理恵(フリーライター&エディター)


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